女性の鼠径ヘルニアの手術

女性と鼠経ヘルニア

女性と鼠経ヘルニア男性は3人に1人がなるとされているため、鼠経ヘルニアというと男性の病気というイメージがありますが、女性の鼠経ヘルニアも珍しい病気ではなく、近年は増加傾向にあります。
鼠経ヘルニアは、弱くなった筋膜の隙間から腸などの内臓の一部が皮下に脱出した状態です。この隙間は男性であれば睾丸につながる血管や精管の通り道ですし、女性の場合は子宮を支えるための靭帯が通過する場所です。
鼠経は胴体と足のつながる部分で、鼠経ヘルニアはふくらみがどこに出てくるかによって、内鼠経ヘルニア、外鼠経ヘルニア、大腿ヘルニアに分けられます。女性のヘルニアは、外鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアが多い傾向があります。また、男性の発症が60歳代に多いのに比べ、女性の場合は10歳代から50歳代まで幅広く発症します。

生理と鼠経ヘルニア

女性には、生理の時に痛みやふくらみといった症状が現れるタイプの鼠経ヘルニアがあります。腹膜の中に流れている腹水や腸などが出てくるケースもありますが、子宮内膜症がかかわっていることもあります。子宮内膜症は子宮内膜以外の場所に内膜の組織が増殖するもので、その組織がヘルニア門から脱出して生理と連動して腫れたり痛みを起こしていることがあります。生理の時に鼠径部のふくらみや痛みが起こるようでしたら、子宮内膜症の可能性がありますので早めに受診しましょう。

年代による女性の鼠経ヘルニア

10歳代・20歳代~40歳代の女性の鼠経ヘルニアは、小児の鼠経ヘルニアの放置や、いったん症状が自然になくなってからの再発が多く、ほとんどは外鼠経ヘルニアです。ふくらみが戻らない嵌頓を起こすことは少ないのですが、痛みの症状を起こしやすく、生理周期に連動して症状が出るケースが多くなっています。妊娠や出産をきっかけに悪化させる可能性もありますし、子宮内膜症の可能性もありますので、早めに治療を受けるようおすすめしています。
50歳代以上になると、外鼠径ヘルニアに加え、大腿ヘルニアが増えます。大腿へルニアは、下肢に向かう血管が通る隙間から脱出するもので、嵌頓が起こる可能性があります。嵌頓を起こすと腸閉塞や壊死などにより大変な緊急手術が必要になる可能性があり、入院期間も長くなってしまいます。嵌頓はいつ起こるかわかりませんので、そうなる前に手術を受けてしっかり治しておきましょう。

10歳代から20歳代の女性の鼠経ヘルニア

子どもの頃の鼠経ヘルニアが悪化して手術に至るケースがほとんどを占めます。小児の鼠経ヘルニアは自然治癒することが多いのですが、10代後半から20代にかけて再発するケースもあります。
生理になると腫れや痛みが出る、生理の際に足の付け根に痛みが起こるといった症状がある場合には、子宮内膜症があってヘルニア嚢(ヘルニアの袋)内の子宮内膜が生理で腫れて症状を起こしている可能性があります。早めに受診してください。
18歳くらいまでの成長期の場合、手術は小児のヘルニア治療で行われている高位結紮を行い、それ以上はメッシュを使用した通常の手術を行います。

妊娠と鼠経ヘルニア

妊娠と鼠経ヘルニアヘルニアの手術では子宮を支える円靭帯を切るので妊娠しにくくなるのではと心配される方もいらっしゃいますが、ヘルニア手術を受けた方が不妊になりやすいというデータはありません。ヘルニアがある状態で妊娠した場合、痛みや腫れといった症状が強くなったり、妊娠や出産で悪化させてしまうケースが多いため、当院では妊娠を考える前の手術をおすすめしています。

50歳以降の女性の鼠経ヘルニア

外鼠経ヘルニア以外の、内鼠経ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニアなども起こるようになり、複数のヘルニアを起こしている場合もあります。
大腿ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアは50歳以上の女性にとって腸閉塞の原因となることがあります。痩せた女性に多い傾向があるので、症状がありましたら早めに受診してください。